2012年7月4日水曜日

2010年11月 『日本国憲法』『自殺対策基本法』

大阪での活動後、2009年に東京に移り、パフォーマンス・アートの創作を志す「舞台作家」として活動を開始した処女作『日本国憲法』が京都芸術センター舞台芸術賞を受賞、一躍注目を浴びる演出家・小嶋一郎。今回は、憲法の原文そのままをテキストとして使用する『日本国憲法』と新作『自殺対策基本法』を上演。舞台作品を通して、憲法と自殺対策を観客自身が当事者として体験する試み。


撮影・神崎千尋

『日本国憲法』『自殺対策基本法』

演出:小嶋一郎
出演者:黒田真史、山本清文、山本称子、佐々木琢、島田健司
制作:前田佳子
共催:フェスティバル/トーキョー(東京公演)。
協力:座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワーク
主催:小嶋一郎
問い合わせ:sky_fish06@yahoo.co.jp




■東京公演  F/T公募プログラム参加
日程:2010年11月16日(火)19:00 『日本国憲法』
17日(水)19:00 『自殺対策基本法』
18日(木)19:00 『日本国憲法』
19日(金)19:00 『自殺対策基本法』
20日(土)13:00 『日本国憲法』

会場:自由学園 明日館 講堂
〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-31-3
TEL. 03-5432-1526
JR他「池袋駅」メトロポリタン口より徒歩5分。JR「目白駅」徒歩7分。

料金:1000円(スタンディング形式)



■『日本国憲法』作品内容
上演会場では、客席を設置しない。演技スペースと観劇エリアをあえて区分しない。観客は、好きなところに立って鑑賞する。上演中の観客の移動は自由。その鑑賞スタイルは、演劇よりも美術館でのそれに近い。
出演者は、上演会場の内外を移動しながら日本国憲法の条文を使って会話をする。また、出演者は憲法を原文のまま発話する。その際、出演者は憲法を単なる音として発話し、コミュニケーションをはかる。このとき、発話者と発話される言葉(憲法)との間には「距離」があるが、それはそのまま現代の人々と憲法という存在の間にある「距離」を象徴することになる。
本作は2009年9月に初演され、京都芸術センター舞台芸術賞2009大賞を受賞している。

■「日本国憲法」を扱った演劇作品を上演するということ
「演劇」で「日本国憲法」を上演する、というと、一般的には憲法の内容または憲法をとりまく現状に対しての批判など、憲法や憲法が存在する社会への思想・意見を含んだ作品が想像される。
だが、本作は違っている。作品の中で、俳優たちは、生まれ、出会い、別れ、という人間の原始的な営みの中で、憲法の条文を発話し、相手との関係を築いていく。俳優たちは相手とコミュニケーションをとるために憲法の条文を発するが、それは憲法の意味内容の説明や伝達ではなく、あくまで相手とコミュニケーションをとるための手段としての発話である。
観客は、劇という虚構に没頭するのではなく、現実(外の風景、音、出来事)が意識できる環境のなかで、それぞれにパフォーマンスと出会うことになる。時に観客は、パフォーマンスの一部にもなる。そして、自分の周囲で行われるパフォーマンスと、人の体を通して様々な形をもって発せられる憲法の条文が(それは時に歌にもなる)、これまでに出会ったことのない「憲法」を感じさせてくれる。

憲法をこのように扱って創作することにより、ある思想や考え方を提起するための上演ではなく、あくまで観客自らが主体となり、様々な可能性が開かれたままに憲法と出会うこと。または、出会い直すこと。つまり、今回の上演が、「観客」と「憲法」の「出会いの場」となることが本作のテーマなのである。そして、演劇という装置が、他では体験できない「観客」と「憲法」の「出会いの場」としての機能を果たしてくれる。
そして、この「出会い」の可能性は憲法についてまったく無知な人にも、知っているが関心がない人にも、そして憲法についてすでに何らかの思想を持っている人にも、開かれているといえる。そして、この「憲法」との未知なる出会いが、現在を生きる我々に何を投げかけるのか。その可能性を共に探りたい。



■『自殺対策基本法』上演意図
政府が国会に提出する年次報告書である「平成22年版自殺対策白書」によると、日本は平成9年から10年にかけて自殺者数が急増し、以後12年連続で年間自殺者数が3万人を超えています。平成21年の自殺者数は、総数3 万2,845人、男性2 万3,472人、女性9,373人です。また平成21年の20代・30代の死因第一位は自殺です。
自殺は、個人的な問題としてのみとらえるべきものではなく、その背景に様々な社会的要因があることを踏まえ、総合的な対策を早急に確立すべき時期にあります。政府においては、2006年に自殺対策基本法を施行し、自殺の防止及び自殺者の親族等への支援の充実等を図るなど、自殺対策の総合的な推進を図っています。
自殺対策は、様々なレベル(国、都道府県、市町村、民間企業、NPO法人、家庭・個人)でなされるべきですが、「家庭・個人レベル」での自殺対策が日本ではまだ不十分なのではないか。
「家庭・個人レベル」でどんな自殺対策ができるのか、私たちに何ができるのか、を上演を通して共に考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

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